2022年 01月 27日
音程・和音表記法
音程・和音表記法 p.16 〜 p.21 音程記号: 集積音程記号: 集積音程をあらわす垂直に並べられたアラビア数字は、上から下に読むのが世界共 通の読み方。 譜例 セヴン・フォー ファイヴ・フォー (通奏低音法の数字の読み方も同じ) 和声にあらわれる変化音の表記に注意しなさい。第3小節の低音旋律のフラットは アラビア数字には表記されない。なぜなら、この表記は音程表記と同様、低音から の各構成音までの音程関係を記す方法であるから。 [ N. B. ] 集積音程による和音表記の注意 D1) p.44 にある完全5度・4度音程による集積音程を和音(縦に並べたアラビア数字: (8・5)で表記しなさい。 p.19 和音表記法について_に関する解説に注意。 ・ 西洋において伝統的な3種の表記法 ・ 西洋人が考案した記号を用いる理由 ・ 調名は国際用語_英語名_を用いる ・本書においては、a. b. c. の和音表記を用いる。 a. 通奏低音法: J.S.バッハの時代には「ローマ数字による和音記号」は考案されておらず、またベートーヴェン時代には「G.ウェバー方式の和音記号」は理論書では使用されていても、一般的には実用化されていなかった。いうまでもなく、機能理論もまだ存在していない。つまり機能理論は、後世の人間が考えた和声的事象に対する演繹論であって、バロック・古典派およびロマン派の和声に表出される諸現象はその規則禁則の規定に基づいて創造されたわけではないのである。ちなみに、機能理論はラモーの和声論によってもまだ確立されていない。それはバッハ没後 150 年経ってあらわれた理論である。とはいえ、そうした演繹論がバロック・古典派作曲家の活躍した後の時代において構築されたものであるとしても、彼等の音楽的なカテゴリーについて何らかの示唆を与え得るものと考えられるが、当時の作曲家たちはその時代に現存した諸々の音楽理論を身につけ作曲をしていたはずである。史実によれば、プレトーリウス、ヘルプスト、シュペアー、ヴェルクマイスター、ニート、ハイニヒェン、マッテゾンなどの音楽教本に解説された通奏低音法が指し示す、音程と和音の感覚や伝統的な作曲技法をパートナーとして和声の構造様式を考えていたのである。 この「アラビア数字」による和音表記法は、Max Schneider の著書<通奏低音およびその数字付けの起源 (1918)>の中で 1600 年頃の楽曲に認められることが明らかにされている。西洋の古典的和声というバロックそして古典派和声の考察を始める前に、そういった理論史に関わる基本的な常識をあらかじめ知っておこう。 D1) つぎに記した通奏低音法を読みなさい。 6 ♯ ♯6 ♭ ♭6 ♮ D2) 例1の通奏低音法によって記された和音表記。 例 ・ エイト セヴン フラット_(トゥリー) _( )は省略してもよい ・・・・・ シャープ_フォー・トゥー スィックス シャープ_スィックス・フォー ・ スィックス・ファイヴ・フラット_(トゥリー) ・・・・・ D3) p.76〜p.78 の通奏低音法によって記された和音表記を読んでみよう。 D4) セクションは異なるが、譜例 162. (p.315) の通奏低音法に注目。 [ N. B. ] 8), 9), 10)の表記内容はとくに重要 例1 通奏低音法 [ N. B. ] アラビア数字や記号は低音部譜表の上段に表記 b. 和音記号: p.18 ローマ数字で和音の根音度と和音性質を示す記号 低音部譜表の下段に表記 Q) 西洋音楽の和音表記に適切な記号は? < わおんきごう 和音記号 Akkordbezeichnung [独] > 和音の種類、位置、機能などを、文字、数字その他の記号によって表示するもの。通奏低音 の数字による記譜、18 世紀のゴットフリート・ヴェ−バー Gottfried Weber (1779 -1839) による音度記号、リーマンによる和音記号や機能表記、ジャズなどにおけるコード・シンボル などがこれに属する。低音の上または下に、その上に築かれるべき和音の音程を数字によって 表示する通奏低音(数字付低音)法は、今日和声学の実習に用いられているが、最も一般的に 用いられている方法は、ウェバーおよびリーマンの用法を簡略化して併用する方法である。 (1) 調は、各音をドイツ語音名(または英語音名)で示し、長調短調はそれぞれ大文字、小 文字で示す。(2) 和音の根音度を、ローマ数字で記し、アラビア数字によってその転回や七の 和音、九の和音などを示す。(3) 必要に応じて、機能表記の最も簡単なもの(T,D,S) によって 和声の機能を示す。なお、ジャズのコード・シンボルは、音名に英語式音名を用い上記の方法 をさらに簡略化したものである。ウェーバーによる方法では、和音の根音度を示すローマ数字 は長三和音を大文字、短三和音を小文字で記すことによって区別し、増三和音には+印、減三 和音には°印を付して区別する方法がとられている。 ( 標準 音楽辞典 音楽之友社 ) 「大作曲家11人の和声法」のテキストにおいて、上記_西洋音楽理論の伝統的な音程・和音表記法である通奏低音法、ヨーロッパの和声学において最もよく用いられている_G.ウェーバー方式の和音記号、コードネーム、の3 種の方法を採用する理由は、西洋人の感性である古典和声を検証するには、その響きを創り出す西洋人自身が考案した和音記号と表記法を使用するのが極めて自然であると考えるからである。これらの表記の優れた点は、それぞれの記号が相互に「シンクロナイズ」されていることだ。また、それらは音程および和音構成と聴覚的性質が即座に判るように考案され、そうしたことから、和声史全領域に渡って広範な検証分析を可能にするものとしてまさに「世界共通の和音表記法」となっている。 現代の音楽理論家は、借用和音論に対して、そこには不可解な和音解釈の乱用が見い出されると指摘している。こうした解釈は日本的形態の和音表記にいたればさらに甚だしい。和音の概念規定についての伝統的な覚え書きでも、この点をめぐる機能論の理論と論理に関する批判は継続される。その一例をあげてみよう。 Q1) A minor : 旋律短音階の音階音を答えなさい。 [ N. B. 1 ] * 印の音階音も他の音階音と同様、旋律短音階の構成音 Q2) A minor : 旋律短音階に基づいた原和音(Primary Chord)を示しなさい。 [ N. B. 2 ] * 全ての和音(↑)は、旋律短音階に基づいた A minor に帰属する構成和音 Q3) ところで、変化記号の付いた*印の和音は他の調に属する和音であろうか? [ N. B. 3 ] 明らかに否である。これらの和音は「音組織_旋律短音階 A minorの調構造を表出す るために必要な固有和音」であり、「他の調に属する和音という認識論」によって説明 するようなことは、その本質的核心を表わす属性を見失うであろう。したがって、それ らを借用和音とする解釈は分析学的に和声の現実と結びつかない非論理的な概念化であ る。そのような和音解釈を指し示す概念的方向は、自然的・伝統的なものではなく人為 的なものにすぎないことを物語っている。ましてや人間の和音属性に関する具体的・現 実的な認知体験にも当てはまらない。 周知のように、*印の和音の象徴機能は、A minor を形成する1次的な要素として分 析され、これを用いて独自の機能が発揮されている場合、西洋ではその全体的平面をシ ステムと呼び、弁証法的和声学において理論構築の基本的基準となるものである。 Q4) では、それらをどのような和音記号で表記したらよいのか? ↑ [ ◆ ] 標準 音楽辞典 _ ウェーバー方式を基盤にした表記の例: 和音表記法は和音の概念とどのような関係をもつのかを考えれば、記号の意味は,常に対象との連関のうちに考案され,記号のもつ役割は、対象となるものを,別のもので認識する手段である。そして対象の同一性_そのものとしての帰属性_を前提としている。 Aminor:終止和声の表出_旋律短音階を基盤とする構造特性 和声学における和音分析は音楽的な事実から分析に値する和音表記の選択を行うものである。和声が表出している調的構造特性を指し示すとするなら、*印の和音表記には、音階とそれに基づく和音の象徴機能に関する和音それぞれの意味づけが必要になる。翻って考えてみると、このようにまとまった音楽全体をまるごと検証してみせる音組織論を、現代の理論家はH.グラレアーヌス「ドデカコルドン 12 の弦」旋法論から学んだと言われるが、この解釈には、都合のいいところだけを都合よく解釈するというごまかしも、いわゆる事実ではないことを事実のように仕組んだ暴力的な読みとりも入り込む余地がない。要するに、意味づけとは「対象の分析全般(中世〜現代)にあてはまる対象の存在への志向」に他ならない。記号はそうした意味の担い手となり、対象の実体概念の本質を語り得るものとなって登場してくる。上記の例の和音表記が表わす意味を読みとると、西洋人が考案した和音記号とその表記法が感覚論的にも理論的にもいかに妥当なものであるかが分かる。 [ N. B. 4 ] p.312 参照 a. 3和音 D1) 上記のページに示された、上から自然短音階、和声短音階、そして旋律短音階それ ぞれを基盤とする原和音(固有和音)の同一音度上での性質を比較する。 たとえば、 [Ⅳ] に関して 自然短音階上では → Ⅳ 和声短音階 → Ⅳ 旋律短音階 → Ⅳ , Ⅳ D2) p.334 演習1_1) の終止和声 、p.375 譜例 190. の冒頭部に注目。音組織_旋 律短音階を基盤とする和音を捉えよう。 D3) p.330 譜例 171. に表出されたA minor : の和声を考察し、D2) の和声が基盤と する音組織とは異なる要素によって形成されているシステムに注目。 明らかに,こういった和音分析に用いられる記号がいかに洗練されているかは、分析を支えている基本的基準如何に関わっている。したがって、和音の借用的な解釈においても、音組織を問題としないのであれば、結局のところ和音の帰属性と象徴機能という実質的内実を曖昧にしてしまうことになる。特殊な和音解釈にしか通用しないような特殊な和音記号をつくっただけでは不十分なのである。それだけではなく、この作業を通じて本源性にもとづく「分析原理」が何であるかを明確にする必要がある。 和声学とは古典がどのように機能しているかを認識しようとするものであり、また、考察と分析は耳で聴いて耳で理解するためにある。まさにその意味において和音表記は、理論のためにだけあるのではなく、可能な限り創り手や、聴き手の立場に近い表記法に還元される必要があることは言うまでもない。 c. コード・ネーム: Q) ( )m と ( )m-5 の和音性質の違いは何か? D) 枠外下の*の和音記譜法は、p.315 譜例 162. 第4小節。 例2 和音記号 楽譜の下段に表記 (アラビア)数字付き和音記号 音度変化記号 例3 コード・ネーム 楽譜の上段に表記 エフ | ジー | ジー ・シャープ・ マイナー・マイナス(フラット)ファイウ゛ ( d. 音度記号: ) 例4 音度記号 和音性質が表記されない和音表記 すべてがローマ数字大文字で表示される 〓 和音の読み方 p.20 Q) 次の記号はどのように読むのだろうか? C Cm C7 Cdim CM7 Cm-5 C6 C add 2 C sus4 Ⅰ Ⅱ Ⅲ゜ ♯Ⅵ゜_大・小ローマ数字と( ゜)( ♯ )に注意 D1) p.19 例2 に音度変化記号の付いた和音記号を読みなさい。 D2) (アラビア)数字付き和音記号に注目。 D3) p.19_例4_矢印の数字付き和音記号の読み方。 D4) p.72 〜 p.73 に記された和音表記を読みなさい。 調名の読み方 p.21 D) 英式の調名「 A phrygian: 」「 C mixolydian: 」 を読めるようにしよう。 古典和声の世界は、私たちに事実を知らせようと話しかけはしない。話しかけるにしても、その事実は聴きとれるというふうに平明に話しかけるだけである。 ここで、概念の特殊的性質の象徴である和音表記の問題を私たちは振り返ってみる必要があるだろう。もっとも、実証的な研究が西洋音楽をまで視野におさめた和音表記の歴史的展望をまとまったかたちで提示するのは、 20 世紀末以降である。古典和声の事象現象を映し出す和音記号が、その歴史性や構造性の置き忘れにとどまらず、そこに架空論理を併存させているとしたら、あるいは、和音構成の成立にとって中心的意味をもっていないとしたら、今日の理論体系において「世界に共通する記号」として受け入れられるようなアイデンティティは存在のしようがない。すでにその端緒においてさえ、ある奇妙なつくりごとが指摘されている。そのゆきづまりの原因となる「限界」については、「和声:和声への問い_ 非科学的な公理論 (https://aptus.exblog.jp/i10/) 」に要約してある。
by cantus-mollis
| 2022-01-27 14:39
| 音程・和音表記法
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カテゴリ
和声学:旋法和声_教会調の概念 前記 和声の変遷 教会旋法と和声法 教会旋法の推移 音程・和音表記法 譜例および演習について 旋法和声_中世・ルネッサンスの和声 音程の和声 初期の音程作法 平行法 オルガヌムにおける声部進行の比較 メリスマ作法 対照的和声作法 リズム・モード 和音的効果 不協音程 協和的3度音程と3和音 13世紀までの終止法 音程作法 強拍部の3・6度音程 イソリズムとリズムの複雑化 段落・終止法 音程と3和音の和声 フォーブルドン ポリフォニーとホモフォニー 低音5度下行の導音カデンツ 3和音の和声 模倣 ホモフォニー 掛留と経過音 終止における完全3和音 半音階法 連続5度 旋法和声_バロック前期の和声 01. 教会6旋法/モンテヴェルディ 02. 旋法転移 03. 原和音と変化和音 04. 導音カデンツとその転移 05. 段落・終止法 06. 変ロ音化 07. 和音性質変化 08. 根音進行 09. 教会調 音程と和音の連結 総合演習 10. 声部修飾 REFERENCE Data
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